豆腐に柳

音楽、書物、映画等の感想、その他日々のあれこれ

Nostalgia 77 / Songs For My Funeral

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 ベン・ラムディン率いるユニットの1stアルバム。2004年リリース。
 個人的には、この名義でのアルバムを聴くのは2枚目。最初に聴いたのが"Everything Under the Sun"というほぼ歌モノのソウル・ジャズだったので、インスト&ヒップホップのこちらを聴いてみたくなったということで入手。ちなみに上記に「率いる」としたが、この1stは、もしかしたら全部彼一人の制作ということになるのかもしれない。彼以外にプレイヤーのクレジットが皆無なのと、レーベルTru thoughtsからのサンクス・クレジットの文言の一部に"a quality album from his bedroom"とあることからもそういう可能性が高そうだ。
 2枚目以降、ジャズ色がぐっと濃くなるようだが、この1stではまたジャズとヒップホップが拮抗しているという印象か。
 少々フリーキーなサックスの音と、時折のソウル色、また猥雑で、ある意味演出されたストリート感覚を呼び起こすヒップホップの要素、さらにダブ等が全体に大して整理することなく混在している様もまたむろん計算の上だろう。そしてその中に非常にメランコリーを感じさせる部分が差し挟まれるのも、アルバムタイトルからもそれなりに意識されたことだろう。そういう趣向もまた実に「英国的」といえるのかもしれない。聴く人によっては実に陰気に聞こえるかもしれないが、そういうリスナーはまず最初からこのタイトルのアルバムの音を聴きたいとは思わないので、どうということはない。
 全体にそういう、意識され、計算された音の感触を感じるが、そこが「鼻につく」というわけではなく、「計算された音だ」と思わせる意図さえも感じる音に仕上がっている。音自体にラフなところも相当含ませながら全体にはきちんとコントロールされた、そういう「いびつ」なところが「しっかり」音に反映されているのもおもしろい。やはり相当の手練によるものだということはわかる。

 試聴

48 / 100

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48. Brian Eno / Another Green World

 このアルバムを知ったのは、たぶん当時愛読していた「ロッキング・オン」の記事だったと思う。ただ実際に耳にしたのは、リリースされて大分経過してからだったはずだ。当時、イーノをどの程度知っていたかはよく思い出せない。基本的に、プログレ系やロキシーみたいな音は得意じゃなかったので、そもそもはあまり興味がなかったミュージシャンだったと思う。それにアンビエント・シリーズのアルバムとどちらを先に聴いたかも判然としない。
 ただポップアルバムとしては、彼の最初の2枚も、時期はわからないが、聴いていたのは確かである。その中で、おそらく最も印象深かったのがこの作品。
 浮遊感というかやや「浮世離れした」というかそうした不思議な音とイーノの涼しげなヴォーカルが非常に心地よかった。「セント・エルモス・ファイア」が好きだったのを思い出す。



Fat Freddys Drop / Dr.Boondigga and the Big BW

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 いわゆるクラブ系の音の情報源としてよく参考にさせてもらっているサイトecrnで初めてその存在を知ったニュージーランドのダブ/レゲエ・ソウル・バンドの2nd。ホーン隊を含む7人編成の大所帯バンドのようである。このアルバムには、ほかにヴォーカルのアリス・ラッセル等、多数がゲストとして参加している。
 レゲエをベースとした重心の低いファンキーなリズムで、全体としてはタイトでしかも温かみのあるソウル・ミュージックが実に高水準に維持されていることに少々驚く。
 サウンドとしてもダブを初めとしたSE的な音も嫌味ではない程度に使われるが、中心にはあくまでヴォーリストのダラス・タマイラ(Dallas Tamaira a.k.a. Joe Dukie)の歌である。彼がまた、張り上げることなく淡々と、しかしじわじわと熱と帯びてくるような、実にソウルフルないい声をしているのである。さらに曲自体の出来も出色。実は、このアルバム以外に既に1stアルバムと、さらに4曲で70分という尺のライブEPも聴いたのだが、つまり4曲で70分をだれることなく聴かせる強靭な演奏力も獲得しているということだ。確かに音としては地味かも知れないが、日本ではあまり話題なっていないのはなぜなんだろうと思う。
 ともかくオーガニックなソウルでありながら、それだけではなくサウンドとしてカッティング・エッヂというか、エクスペリメンタルというかそういう面も兼ね備えた、しかもレゲエでありダブでもありまたファンクでもあり、さらに、それらが交じり合っているのかそうでないのかよくわからないまま、音楽としてはともかく聴かせるというスケールの大きさを感じるバンドだ。いや、久方ぶりに、「バンド」として大きな「才能」を感じさせる「逸材」に出会った感がある。
 ライブから遠ざかっている身ではあるが、彼らがもし来日したら、見に行ってしまうかもしれないと思わせるような。
 常識的には、ヴォーカリストとキーボード・プレイヤーがキー・プレイヤーだろうと。

試聴もできるオフィシャルサイト




The Last Electro-Acoustic Space Jazz & Percussion Ensemble / Fall Suit

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 Yesterdays New Quintetの別名義企画の、2007年にプロモか何か中心に流通されていたという"Summer Suite"に続いて、その続編ともいうべき"Fall Suite"が再リリースされた、ということらしい。再リリースとも言ってもこんなものがあるとは私は今までまったく知らなかったのだが。
 今回も体裁は、1トラックで39分弱。組曲形式になっており、4つほどのパートに分かれているのも前回"Summer Suite"と同様。
 前回と少々趣が異なるのは、季節柄もあってか、音自体としても、フィールドレコーディングの音源らしき自然の音(鳥の声や水や雷鳴の音など)や風の音を模したSEが聞こえたり、本物ではないだろうがストリングスがフューチャーされたりしているのが耳を引くが、全体の趣も"Summer Suite"とは大分異なる。前半はどちらかというと夏の名残を楽しむような陽性の音に彩られるが、徐々に季節に流れる空気の速さや変化、冬へ向かう季節を表現する風情に変わってゆく。上述したストリングスの音色は非常に効果的に響いている。マッドリブのつくる音としては今までこうしたタイプは聞いたことがないようにも思う。
 彼の音楽性の幅広さを改めて感じた。
 しかしそろそろYNQの新譜が聴きたいような。

 試聴

鈴木清順 インタヴュー記事

 9/28の朝日新聞の夕刊、「人生の贈りもの」というシリーズのインタヴュー記事で、鈴木清順がインタヴュイーとして登場している。
 1923年生まれの現在86歳。最近、あまり映画の話を聞かないので引退したのかとも思っていたが、2005年には、現時点での監督最新作「オペレッタ狸御殿」(チャン・ツィイー主演で、かつての日本映画のリメイクだそうだ)も撮っているとのこと。現在は「肺気腫」を患い、闘病中。ただ入院はしておらず、酸素吸入の管をつけて日常を過ごしているということだ。そのせいで「行動の自由が奪われています」と彼は言うが、写真を見ると表情自体は明るく見えてちょっとほっとした。
 で、このインタヴューが短いながら、力の抜けたところが実にいい感じなのである。
「人生で、自分の方から、というのは何もない」という言葉から始まり、「(映画は)「面白くするにはどうすればいいか」しか考えない。(中略)面白さのために物語をいろんな仕掛けで、ぶった切っていく。」「「映画は頭ではなく、目で見なさい」ということです」等、いわゆる現代のメディアや知識人的な「常識」を覆すような発言が小気味いい。
 無論、ここでも彼自身が語っているような、彼が成長した時代背景の問題もあるだろう。ただ「主体的に自らの人生と可能性を切り開くポジィティヴィテイー」という現代のメディアが好んで取り上げる最早「紋切り型」の姿勢にはない、「呼ばれた」あるいは「与えられた」機会やものに対して真摯に取り組むという、本来の日本人に合ったスタンスのほうが、無理がなくて、結果多くの人が「幸福」に生きていけるのではないかと思った次第である。
 あるいは映画(や他の表現形態でも同様だが)についても、「目で見る」というなかなか生半可な映画人には言えそうにない、「エンターテイメント」を一義とした姿勢にも、何だかすがすがしさを感じることになった。

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