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豆腐に柳

 音楽、書物、映画、美術展等の感想、その他日々のあれこれ

2019.01.01[火] 三菱一号館美術館 & TOTOギャラリー・間 & Bunkamuraザ・ミュージアム

明けましておめでとうございます。
旧年中はお世話になりました。
本年もよろしくお願いいたします。

昨年暮れに見た美術展の感想を、3つ合わせて簡単に。

12/18、丸の内の三菱一号館美術館で「全員巨匠!フィリップス・コレクション展」を見る。
「フィリップス・コレクション」はアメリカのダンカン・フィリップスが創設したコレクションで、1921年にワシントンでアメリカで近代美術作品を扱う最初の美術館として開館、と展覧会のチラシにある。
タイトルに「全員巨匠」とあるように、次から次へと著名画家の作品が出てくる。
羅列してみると、シャルダン、ゴヤ、アングル、ドラクロア、マネ、コロー、クールベ、ドーミエ、シスレー、モネ、ゴッホ、スーラ、セザンヌ、ゴーガン、ドガ、ピカソ、ルソー、ボナール、デュフィ、ブラック、カンディンスキー、クレー等々。
確かに見るべき作品、おもしろい作品が多いように思う。少なくともこちらの趣味とは結構合う。
個人的に印象に残ったのは、まずはジョルジュ・ブラック。
今まではなんだかキュビズム的作品の記憶ばかりで、いやそれも悪くはないし、今回の出展作もそれらしい作品がいくつかあったが、さほどキュビズムを意識せずに見られるものが目についた。幾何学的でありつつ形状が具象的でシンプルでとっつきやすい。
もうひとりはボナール。いくらか前に個展を見てきて間もないが、今回のほうが、なんというか、印象度は強かった。つまり他の、傾向の異なる画家と並べられると、その個性が際立つというタイプなのかもしれない。「開かれた窓」「棕櫚の木」の2作に見られる、色遣い、様々な色彩が微妙に溶け合った様相、そして開放感は他ではなかなか得られない。

ほかに、今までまったく知らなかった作家の作品、ロジェ・ド・ラ・フレネの「エンブレム(地球全体)」はキュビズムの画家らしいが、この作品は、難解さはまったくなく、一種のユーモアとシンプルゆえの潔さ、そして薄明るい色彩の妙も手伝って、温かみのある作品に仕上がっている。
https://mimt.jp/blog/official/?p=2919

ということで、高水準の作品ばかりで、非常に満足度の高い展覧会だった。2019.2.11.まで。


https://mimt.jp/pc/


12/20、乃木坂のTOTOギャラリー・間で「田根剛 | 未来の記憶 (Archaeology of the Future) Search & Research」を見る。
11月に東京オペラシティギャラリーで見た展覧会のヴァージョン違いというかリミックスというかといった趣の展覧会。こちらは規模もオペラシティギャラリーより小さめ。そのせいか、はたまた会場の性格のせいか、入場は無料。見る方としてはありがたい。
会場は2F?に分かれていて、まずは3Fへ。3Fでは、オペラシティギャラリーと同様に、様々な発想にヒントの源泉になったような写真やイラストや資料のような類が所狭しと壁に貼り付けられ、その間の空間に、田根のこれまでの、あるいは進行中の建築プロジェクトの模型が並ぶ。さらにその外、つまり屋外の空間にも、さらに模型が並ぶ。趣向はオペラシティギャラリーと同じだが、空間が狭いせいで展示の印象は濃密になる。
その後、階上に向かうと、靴を脱ぐように言われ、広いワンルームみたいながらんとした部屋に入ると数人が床に直接腰を下ろして、上下を除く四面の壁に映し出される映像を眺めていた。その中に入る。
オペラシティギャラリーでも建築プロジェクトの映像は行われていたが、こちらのほうが、座って眺めるせいか、より「近い」印象。「近い」ということは「大きい」ということにもなる。壁に背中をもたせかけて映像を眺めていたのだが、その背中の壁にも映像は映し出されるのだ。ともかくも迫力は感じた。身体的体験に近い映像体験。

建築家の展示は、やはり今回も「当たり」だった。昨年12/23で終了。

https://jp.toto.com/gallerma/ex181018/index.htm


同じ12/20、その後、渋谷へ周り、Bunkamuraザ・ミュージアムで「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア」を見る。
実は、チケットを買ったときは「エルミタージュ」みたいにロシアの美術館所蔵の西洋絵画展みたいな趣かと勘違いしていたのだが、実際に足を運ぶと、全部ロシア人画家の作品だった。たぶん。
制作年度が19世紀中葉から20世紀初めくらいの作品が並ぶ。
文化的に見て、ロシアをヨーロッパの「辺境」と呼ぶのが適切なのかどうかわからないが、そうだとしたら、そうした一種の「辺境性」が表れた展覧会だったように思う。出展作品が、その時代のロシア人画家の代表的なものなのか、ある基準に合わせて選ばれたものかがわからないので何とも言えないが、全体に技術的には優れているが、趣向や画風は素朴で写実的と言えそう。

一般的な西洋美術史では、この時期、ドラクロア、ゴヤ等のロマン主義、ミレー、クールベ等の写実主義、印象派、ナビ派、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン等のポスト(後期)印象派、モロー、ルドン、ムンク等の象徴主義、また世紀末には、ジャポニズムやアール・ヌーボー、アール・デコも。
20世紀に入って、ピカソ、ブラック等のキュビズム、表現主義、マティス等のフォーヴィスム、カンディンスキー、モンドリアン等の抽象派あたりが含まれるようだが、出展作品は上記のように、写実的なものが多く、時折、印象派風、あるいはポスト印象派風というのが交じるという感じか。
まぁ細部を見れば、往時のヨーロッパ美術の潮流の様々な影響の指摘も、おそらく可能ではあろうが。
そういう印象もあり、全体にはなんだか牧歌的で、いい意味で「懐かしい」感じを呼び起こした。
個人的に気に入ったのは、ドゥボフスコイ「静寂」、ミャソエードフ「秋の朝」、J・G・バラードを思わせるサヴラーソフ「霜の降りた森」というところか。
いや、おもしろかった。

1/27まで。

http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_russia/

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